こんにちは。昨年6月末で定年退職を迎えた独身男性です。
今回は須藤古都離さんの「ゴリラ裁判の日」を読んだ感想です。
ゴリラ裁判の日は、2023年のメフィスト賞に選ばれた作品です。メフィスト賞とは講談社の雑誌「メフィスト」が選ぶ新人賞で、個性的でぶっ飛んだ作品が多いそうですね。
この「ゴリラ裁判の日」もゴリラが裁判を起こすというかなり個性的な作品です。
雌のゴリラ「ローズ」は手話を用いて人間と会話ができるという特殊な能力を持っています。ローズはアメリカの動物園で平和に暮らしていたのですが、ある日悲劇が起こります。人間の子供が柵からゴリラの飼育場に落ちてしまい、その子を助けようとしたローズの夫が子供を捕らえたところ、危険と判断した動物園の職員に射殺されてしまったのです。動物園側のこの対応にどうしても納得がいかないローズは、ついに動物園を相手に裁判を起こして闘うことに・・・というお話。
ローズは手話で人間の言葉が話せるだけでなく、知能も高くて人間並の思考や価値観、感情も持ち合わせています。
最初はしゃべるゴリラってどうなんだろうと思いましたが、本を読み進めているうちにローズがゴリラであることを忘れるくらい全く違和感はなくなりました。
ローズには人間の仲間が何人もいて、優しい人、叱ってくれる人、乱暴だけれど頼れる人などとても魅力的な人ばかり。彼らとのかかわりでローズが成長していくところもグッときます。
そして物語のクライマックスの法廷シーンは圧巻でした。
「人間の命はゴリラの命より優先されるべき」という人間側の考え方に、人間が行う裁判の場でいったいどうやって立ち向かっていくのか。このとても高いハードルに対して、色々な意表を突く戦略をたてながら闘っていく様子にグイグイ引き込まれました。
この作品は、かなり奇抜な設定ではありますが、「人間とは」、「正義とは」、「言葉とは」といった事がテーマになっている作品でした。エンターテイメント性もあってとても読み応えがあり一気読みしてしまいましたね。
それではまた。
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