こんにちは。昨年6月末で定年退職を迎えた独身男性です。
今回は小川糸さんの「ライオンのおやつ」を読んだ感想です。
この作品は2020年の本屋大賞第2位の作品です。
「ライオンのおやつ」というタイトルからは何の物語かちょっと想像しにくいですね。いったいどんなお話かというと・・・。
主人公は癌を患い余命宣告を受けた33歳の海野雫(うみのしずく)で、人生最後の場所として瀬戸内海に浮かぶ小さな島にある「ライオンの家」というホスピスを選びます。
この物語は、そんな雫のホスピスでの暮らし振りが描かれているのですが、その暮らしは基本的に自由でイベントなどはほとんどありません。
唯一のイベントが毎週日曜日に開かれるおやつの会で、毎回入居者の誰かのリクエストを元に作られたお菓子を、エピソードとともに紹介して、みんなで食すというものです。
物語は生と死について、所謂死生観について描かれていますので、重いテーマではありますが、ライオンの家のオーナー、スタッフ、島の人達がみんないい人で、悲壮感が漂うというよりむしろ優しく温かい気持ちになれるものでした。
また、おやつの会で語られるエピソードが感動的で、死と向き合っていく雫の気持ちの変化も切なさの中に美しさも感じました。
あと、書かれている文章がとても繊細で優しい表現に溢れていて、とても心地よい気持ちにさせられました。
例えば、島に到着したときの描写では、
海を前に深呼吸する。空気がおいしい。おいしすぎて、おかわりするみたいに、二回、三回と繰り返した。それだけでもう、おなかがいっぱいになる。こんなふうに、空気を完熟した果物みたいにむさぼったのはいつ以来だろう。
また、朝食で出されるお粥を初めて食べたときは、
食べれば食べるほど、おなかの底がぬくぬくして、乾いた大地に水が染み込む。お粥の滋養が、体の津々浦々へと行き渡っていく。
といったように。
「ライオンのおやつ」は幸せな最期の迎え方について考えさせられると同時に、毎日をもっと大切に生きていこうと思わせてくれる一冊でした。
それではまた。
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